法規上の入浴剤について
入浴剤は、『医薬品医療機器等法』(旧薬事法)により規制されており、その使用目的や成分等により化粧品と医薬部外品の2つに分類されます。
化粧品については、同法第2条第3項によって『人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。』と定義されています。したがって、化粧品としての入浴剤はこの定義に適うものでなければならず、表示できる効能は「(よごれをおとすことにより)皮膚を清浄にする」「皮膚をすこやかに保つ」「皮膚にうるおいを与える」等の化粧品の効能の範囲(現在56の効能が行政通知で示されている)に限定されます。
一方医薬部外品は同法第2条第2項によって『人体に対する作用が緩和であること。』とされています。ここでいう人体に対する作用が緩和であるとは、正常な使用方法の下で人体に強い作用を及ぼさないことに留まらず、人体に対しても強い作用を起こさないことを意味します。浴用剤(医薬部外品)について認められている効能効果は次の項の後半で説明していますが、その範囲で製品ごとに個別に承認を取った効能が訴求可能です。剤型は、散剤、顆粒剤、錠剤、軟カプセル剤、液剤等が認められています。また使用上、保管上の注意を明記することとされています。
医薬部外品は厚生労働大臣及び都道府県知事(承認基準の範囲の品目のみ)による製造販売承認制ということで医薬品同様に厳しく規制されますが、反面販売については医薬品と切り離し特に規制はされていません。つまり、医薬部外品はその成分、作用、使用目的から判断して、その販売を医薬品販売業者(例.薬局等)以外の販売業者、例えば化粧品店、雑貨屋、スーパー等で販売して支障のないものとされています。
表示に関する法規・自主基準について
ここでは、浴用剤(医薬部外品)の表示について解説します。基本的には『医薬品医療機器等法』に基づいて記載されています。表示について大きく分類すると、法定表示と任意表示からなっています。
1.医薬品医療機器等法により定められている表示(法定表示)
医薬品医療機器等法による表示(医薬部外品)は、同法第59条(直接の容器等の記載事項)により次のようになっています。
- 1.製造販売業者の氏名又は名称及び住所
- 2.『医薬部外品』の文字
- 3.名称(販売名)
- 4.製造番号又は製造記号
- 5.重量、容量又は個数等の内容量
- 6.厚生労働大臣の指定する成分を含有する医薬部外品にあっては、その成分の名称(注1)
- 7.厚生労働大臣の指定する医薬部外品にあっては、その使用期限(注2)
注釈
注1:指定成分と称され、現在140の成分が指定されており、一般的に使われている色素名、香料等がこれに該当します。
注2:酵素やビタミンA油の製剤等が指定されています。ただし、指定されたものであっても、製造後適切な保存条件のもとで3年を超えて性状、及び品質が安定であれば、表示の必要はありません。
2.製造販売業者の任意の表示
製造販売業者の任意の表示、特に効能効果については、1988年(昭和63年)7月に浴用剤工業会(現・日本浴用剤工業会)で『浴用剤(医薬部外品)の表示、広告についての自主基準』がまとめられ、平成25年4月に改正され、現在この自主基準に基づいて運用実施されています。
この自主基準は、厚生労働省(旧厚生省)から示されました『浴用剤の効果は、有効成分が浴槽の湯に溶け、湯の温浴効果及び清浄効果を高め、その結果として承認された効能効果の諸症状の緩解が得られるものとして認められたものである。効能効果の表示、広告にあたっては、この主旨に従い、〈温浴効果及び清浄効果による諸症状の緩解〉である旨を明示すること。』を基本としており、商品への表示や広告宣伝での表現可否について、具体例を挙げて説明しています。
なお、浴用剤(医薬部外品)について認められている効能効果は、おおむね次の範囲とされています。
あせも・荒れ性・うちみ(打ち身)・肩のこり(肩の凝り)・くじき・神経痛・しっしん(湿しん)・しもやけ・痔・冷え症・腰痛・リウマチ・疲労回復・ひび・あかぎれ・産前産後の冷え症・にきびの範囲であり、いんきん・たむし・水虫・ひぜん・かいせんの効能については配合成分によっては認められます。
また、浴用剤の成分表示の方法については、他の医薬部外品と同様、平成18年4月より日本浴用剤工業会の自主基準(日本化粧品工業連合会の自主基準と同一)に基づき、配合している全ての成分を表示しています。